羽子板と聞いて、誰もがまず頭に浮かぶのは「羽根つき」でしょう。羽根つきの羽根の飛ぶ様がトンボに似ていることから、蚊が病気を仲介することを認識していた昔の人々は、羽根をトンボに見立てました。そのことから蚊はトンボを恐れ、ひいては子供が蚊に刺されないという厄除けのまじないとして、正月に羽根つきを行っていました。
また羽根つきの玉には、板で突いたときに音が良いことから「ムクロジ」という木の、黒くて固い種子が用いられています。「ムクロジ」は「無患子」と書き「子供が患わ無い」ようにという意味が含まれています。
江戸時代には羽根つきの板に、現在の原形とも言える歌舞伎役者の舞台姿を押絵で仕上げて取り付けた飾り羽子板が登場し、昭和期に入ると美人画が多く描かれるようになり、衣装も艶やかに、華やかになっていきました。
このように羽子板は正月の羽根つきの遊び道具、贈り物、飾り物という用途に加えて、女児の初正月を祝い、邪気をはね除け美しく無事成長することを願うための大切な飾りとなっています。